中身/
たもつ
カバンを抱えて人を待っている
いつしかカバンから手足が生えてくる
カバンに抱えられる
私の手足は引っ込む
カバンが私のファスナーを開ける
あんなにあった体の中身がなくなっている
最初から何もなかったのかもしれない
カバンは自分の中身を
空っぽの私に移す
いろいろなものの角があたって
内側から痛い
待ち合わせをしていた人がくる
カバン、新しくしたんだ
安物だけどね
というやり取りが聞こえる
かつて同じセリフを
私も言った気がする
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