波のあとに/木立 悟
音を持たずに水を切り
物語を捨てる
死神に無視され
今日を今日に置く
悲しみは増し
枠は増さず
光は増して
片目を覆う
朝は白に 朝は茶に
まばたきをまばたきにただぬぐう
頬と粉 いつか
まぶしい日は終わり
花が花を抑える庭の
小さな足跡のための径
空へ 空へ
吹きつづける色
ざわめきが 暗がりが
青に触れ
はじけ
低い低い通りを歩む
身を乗り出し
未来を見る
誰も息をしない
緑の目の行先
冬の鳥が常に胸に居て
何もせずただ冬で居る
そしられても むしられても
そのままで居る
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