みばう/salco
、亭主は促す
肚の内奥に
亭主の指先だけが知るツマミがあり
それを回しているのだ
それは水いぼのように微細な突起で
番号が一から三十一まで振ってあり
幾つか仕込んだ暗号の組合せを一つずつ
一つずつを調整している
そこには登記謄本や実印や
家作の上がりも入っているのだから
明日も過去の箱入なのだと
知らしめてやらぬと、
石女が野良仔を孕むようでは困るのだ
苦労なことだよ
それで、未亡人
浴衣を出た白い脚は走っているところ
半ばは苦悶に眉間を立てて
響かぬ悲鳴を上げながら
首のない馬に跨って地熱揺らめくこの世の涯を
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