日常劇場/電灯虫
 
を駆け上る。


幼稚園の頃のバザールで
手を離して飛んでいった黄色の風船が
赤色と一緒に頭上をデート中だった。
千載一遇のチャンスとはこのことで
これを逃すと ズボンの裾を掴んだままの
幼稚園の自分が悲しんでお風呂に入ってくれない。
ニトロのエンジンは
今日に限ってメンテナンス中だけど
大人な自分は腰痛の分だけ 自力で高く飛べるので
トランポリンなアスファルト道路を踏み込んで
二,三回の助走ジャンプで勢い付けて
紐めがけて飛んでった。
デートの邪魔はしたくなかったから
二つ掴んで下に降りると
ピエロなお姉さんが作る風船犬が
尻尾を振って僕と一緒に待っていた。
頭を一撫でして尻尾を楽しそうに振るから
三人一緒に 赤と黄色の風船を掴んで 
空気入れを買いに行く。

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