夕暮れのひと/恋月 ぴの
 
スリのワンピたってお母さんが仕立ててくれたあっぱっぱで
ストンとした裾をパンツの中に押し込み
日の暮れるまで男の子達とザリガニ釣りに興じていた

糸の先につけたスルメイカで面白いほどにマッカチンが釣れて
ブリキのバケツの中は大きなハサミで蠢いていた


ちびっ子がちびっ子だった頃


わたしには帰ることのできる小さな家があって
前掛けをしたお母さんがわたしの帰りを待っていた





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