無題/葉leaf
 

「このワインの重さの中にね、本当は何も入っちゃいないんだ」

強盗犯と級友は、次の日母校を見に行った
どんな歌が、どんな傷が、どんな花が、どんな色が、どんな字が
広い校庭と窮屈に固まっている校舎
敷地をめぐる柵に銀杏の大木
強盗犯は泣きたいのを我慢した
級友は慰めたいのを我慢した
「俺は本当は愛されたかったんだ」
「僕じゃないよ」
「俺は本当は誉めてほしかったんだ」
「僕じゃないよ」
「犯罪って悪いことなのか」
「少し黙ってくれないか」
二人は太陽が空を吸収し続けるのをともに感じた
強盗犯は教室をのぞいた
教室の中で授業を受ける生徒を見た
「あの中に俺はいない」
「昔々、小さな森がありました」
「俺は一度もここに来たことがない」
「小さな森の中にはとても大きな海がありました」
強盗犯は太陽が今すぐにでも落下すればいいと
級友は太陽が今すぐにでも月に変わればいいと
二人は車に戻って
終わりのない議論を続けるのだろう


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