今日ノ夢 /服部 剛
 
午後の体操が始まると 
もの忘れのお爺さんは 
何かを思い出したように 
皆の輪からむくっと立ち上がり 
部屋の外へ歩き出した 

つきそいながら隣を歩き 
途中でソファに腰を下ろして 
ガラス工場で働いた日々や 
趣味の天体観測について   
30分ほど、ゆっくり聴いた 

「部屋の方で皆がピンポン、やってますよ」 

「よし、いってみようか」 

ソファからむくっと立ち上がった 
僕等は並んで 
歓声の聞こえる卓球場へ、入っていった 

卓球台の前に置かれた2つの椅子に 
僕等は腰かけ、かたい握手を交す   

ピー!と笛が鳴り 
ネット越しに立
[次のページ]
戻る   Point(4)