夏が来て/草野春心
 
  夏が来て
  巨きな足で僕を
  やさしく踏みつぶしていった
  蟻より小さく
  原子よりもっと小さく
  僕は
  ただの言葉になった



  それから南風に運ばれ
  いくつかの美しい川を渡り
  もの悲しい廃墟を過ぎ
  あのひとのくちびるにふれた



  夏が来て
  僕はそんな夢を見た
  目覚めるとそこは
  世界のようでもあり
  巨きな足跡のようでもあり
  夏の抱く
  ひとつなぎの思いのようでもあった



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