あまみずの 水化粧/yumekyo
ぐる
金魚の柄のガラスの鉢に氷の結晶が高く高く積みあがっていく
さらさら さらさら さらさら さらさら
雷鳴とともに店が飛び上がったと思った
トタン屋根が泣き崩れるように音を立てた
母は全て予見していたのだ
山育ちの母は雨の匂いを嗅ぐのが上手かったのだ
カキ氷に匙を指したまま呆然と外を眺める僕の向こうを
駐在さんの自転車が走っていった
あっという間に泥濘になったムラの細い道を
材木を積んだトラックが走っていった
僕はまた田んぼの中の一本道を母に手を引かれて歩く
一時の驟雨を得て息を吹き返した稲が風に吹かれていた
畦道への入り口に植えられたひまわりが数本
西日に照らされて きらきらと咲いていた
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