隠すひと/恋月 ぴの
姿
現実を直視しないのが幸せのこつだったりして
*
単なる「部位」に違いないのだけど
これこそ。わたしの総て
どうぞと席を譲られても困ってしまうし
無理なダイエットはリバウンドが怖い
おんなものの傘があくまでも華奢なように
ひとりで生きられない女でありたいものだけど
誰も気付いてはくれないみたいで
*
見てくれだけが大切なんだよね
いざとなればパッド入りの勝負ブラがあるし
半ばだまされて買った補正下着だってある
物事の本質なんて誰ひとり求めてはいないのだから
姿見に映すわたしの姿
ここぞとばかり大胆不敵な見得を切る
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