隠すひと/恋月 ぴの
 
姿
現実を直視しないのが幸せのこつだったりして




単なる「部位」に違いないのだけど
これこそ。わたしの総て

どうぞと席を譲られても困ってしまうし
無理なダイエットはリバウンドが怖い

おんなものの傘があくまでも華奢なように
ひとりで生きられない女でありたいものだけど

誰も気付いてはくれないみたいで




見てくれだけが大切なんだよね
いざとなればパッド入りの勝負ブラがあるし
半ばだまされて買った補正下着だってある

物事の本質なんて誰ひとり求めてはいないのだから

姿見に映すわたしの姿
ここぞとばかり大胆不敵な見得を切る







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