飛ぶ鳥,落ちる鳥(鋭角と季節のはじめ、台風の間)/はるな
す愚かさを知るのは、このドアーを誰かに壊して欲しいと願うことと、どれほどの違いがあるだろうか.
わたしたちにとって幸運なことのひとつには、値打ちのつけがたいものがまだまだたくさん存在するということかもしれない.鳥の飛ぶ軌跡も、その年にはじめてかく汗も、カーテンのゆれる速度にも、あらゆるものに価値はあるけれども、それがどの程度の価値かを決めることはいつも難しい、ひとによってぜんぜん違うから.場所によっても、時期によっても、ぜんぜん違っているから.
はやくドアーを開けて入ってきてください.わたしが気づいたときには、すでにもうそこにいてください.だから、そのときまでわたしは顔をあげません.でもわたしは、もうずっと気づいています、俯いたこの状況は、多くの困難を頭上にかわせるけれども、また多くの機会を、こぼれおちる水滴のように逃し続けることに、わたしはもうずっと気づいています.だけれど、多くの子守唄がやさしすぎて、いまだに顔を上げられずにいます.はやくドアーを開けて入ってきてください.
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