暗示/きりえしふみ
多くの者が目覚めている素振りで その実眠っており
自らの生きながらの眠りから解き放たれることは少ない
多くの者が意識的に また無意識の内に
背負わされている日々と歴史の車輪の歯車に
無自覚に飲み込まれ痛みながら また病みながら
その痛みと病に気付かない
彼らの内目覚めている僅かな者たちは
全く何も持ち得ず また他者から何物をも奪い取ろうともせずに
ただ自らが回す車輪の重みに目覚めていた
そうして この先辿るであろう「我々」の道を予見しながら
それを声高く主張することもない
彼らの眠りを揺さぶり 目覚めさせようと目論んだ者の結末は
血と糾弾と迫害にのみ縁取られていたから
数多の聖人 英雄たちの悲運を捉えた額縁は謳う
「誰も決して大衆の眠りを破ってはならない」
(c)shifumi kirye 2011/05/26
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