水槽/1486 106
始まりは透明な水だった
安らぎが包み込む世界で
ただ思いのまま泳いでいられた
沢山のものを吸い込んで吐き出して
濁った視界にふと気付かされる
生きるために水を汚していた
ここではないどこかへ行きたい
世界が変われば何かが変わる
自ら汚した水槽の中でただ願う
アクリルの透明な壁があった
弾みでぶつかった衝撃で
ふと思い知らされた不自由
泡のように浮かんでは消えていく
歪んで次第にはっと目が覚める
汚れの中でも生きるしかないと
枠組みなんて何の意味も無かった
足りないものは何一つ無かったはずなのに
ここではないどこかへ行きたい
世界が変われば何かが変わる
ただ願う自ら汚した水槽の中で
死ぬまで逃げられない水槽の中で
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