追憶、の/たもつ
 
 
  
ノートの中で消えかけている
紫陽花の履歴
錆びた機器類は蓄電されることなく
表面積のすべてが風に接している
 
人の断面には形容詞が無い
優しさを語ることに対して
まだ臆病だから
 
停滞した前線による雨が
空へと墜落していく
肉厚の葉をもつ観葉植物の側で
七十九歳になった重雄くんが
お母さんに会いたい、
と泣いた
 
 
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