友情について/佐々宝砂
 
なんとなく手を差し出したら
貴方も手を伸ばしてきた

ふたりして寝転がってる草のうえ
喋る必要はないのだと
そういう感情だけが走ってきた

そんな牧歌的な時代は
噛みしめる間もなく
過ぎて

いま貴方と私は
黙りこくって
カウンターにすわって

どちらともなく
グラスを持ち上げて
軽くぶつける

乾杯のネタなんかひとつもないわと
言おうとして何も言わない

これはこれで
かなり
牧歌的なのかもしれないわ






Pakiene/パキーネ名義で発表。

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