クロール/ホロウ・シカエルボク
 
いる
泳ぎ続ければこいつはいつかここを去っていくのだろうか
それがもしも起こるのならば見てみたいと思った
泳ぎ続ければこいつはここを離れてゆくのだろうか?
そんな理由があるなら見てみたいと思ったんだ
ねえアスファルトはもう溶けてはいないよ
ねえ泳ぎつく先には多分もう目指してたものなんかないよ
そう教えてやった方がいいのかもしれないけれど


夜が更けそして明けてゆくその音を俺は聞いたことがあるんだ
それがどんな感じなのかをこの身体で感じたことがあるんだ
それは新しい生よりはむしろ新しい死に似ていて
真新しい棺桶に横たわる自分のことを俺は考えたんだ
あいつはまだ俺の中を泳いでいる
目指す場所はもうどこにもないというのに
夜明けはまだ遠いよ
夜明けまで起きていることはひとつの死を見ることだよ
夜明けまで起きているといつもそう思うよ
亡霊は泳ぎ方を変えることはない
それはただそこに落とされた消化されなかった記憶なのだ





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