蛇の消えた家/和田カマリ
 
大きな古い蛇
屋根裏から
台所に落ちた

そのまま外に
スルリと這い出
道端の用水路へ

右へ左へ
身を捩りながら
流れて行った

蛇の消えた家は
長く持たない
赤い張り紙

社長も家族も
社員さんも
みんないなくなった

腕を組み
鬼の形相で
立ちすくむ人々

毒の息を吐き
進入を計るも
結界は破れず

一人去り
二人去り
静かになった

ただ一人
手を合わせて
拝む者がいた

毎月毎月
米を貰った
恩義があると

その者の姿も
やがて見えなくなり
誰も来なくなった

それから何年か
呪文の張り紙
ボロボ
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