礫/草野春心
 

  出る幕ではなかったのだ



  悲しみも
  砂粒のごとき憐憫も
  わたしの心の切れ端ごと
  烏に啄ばまれるがいいのだ



  それは景色ではなかった
  累々と重なる骸も
  潮臭い瓦の海も



  景色ではなかったのだ
  それはわたしの網膜を焼き
  心へと崩れる
  幾つもの礫だった




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