雨/夢/黒乃 桜
 

白熱灯から
あなたの温度が
海辺沿いに
電線を辿る

白い烏が
両手を広げて
私の足下を
途端に断ち切る


昨日の夢で
 その人に何かをしてしまって
ベッドサイドに立ち尽くされた

呼吸を止めると
 見つけられないみたいで
その人が帰るまで 息をしなかった


卑屈になる横隔膜が
どうして物を言えるのでしょうと
細い髪もゴワゴワといじけたりして

卑怯になる足首は
去年のクリスマスに買ったブーツの中で
誰も見ないアンクレットに
首を絞められて


昨日の夢の
 その人は
もしかしたら 今日
前髪を切ったのかもしれない

鏡の中の私は
 慣れない手つきでハサミを動かす
パツリ パツリと音を立てて


あなたの温度は
冷たくも 暖かくもなく

ただ カーテン越しに
私に微笑みかけてくる

雨風の音に 交ざりながら。

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