引きこもりの窓から/シャドウ ウィックフェロー
強い風にベランダの洗濯物たちが揺れて
下着やハンカチがくるくる回りながら踊っている
もうお昼になるというのに
布団でぐずぐずしたまま
そのありふれた光景をガラス越しに眺めている
ふいに失われた日常を
そのディテールを見つめることで
取り戻そうとするリハビリみたいに
ほら靴下が下手なステップをふんで
しつこくタオルに絡みだした
はや夏を想わせるような
窓の枠いっぱいの青い空とじりじり動く巨大な白い雲
遠くに響いている低く唸る車の音
隣の子供がときに上げるかん高い声
それら何の変哲もないものたちの
煌めきとざわめきの中へ
もういちど適応し直そう
さあそろそろ起き出して
君のいなくなった普段の生活というものに
慣れなくては
サッシを開いて
ああ今日もよい天気だなんて
陽の温もりに感謝したりして
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