数えるひと/
恋月 ぴの
れる
夏の風に吹かれて
遥か遠く運ばれてきた潮の香りに耳をすます
わが子を抱いたお母さんたち
砂場の近くの木陰で雑談に興じている
敢えてあのことに触れることはないのだろう
胸元で甘える幼子の息遣いに
目に見えぬ不安に苛まれることよりも
この子を守り抜くのだという決意が勝っているようにも見え
風に吹かれる
夏の風に吹かれて
そして湧き立つ積乱雲の忙しさに暫し耳をすます
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