数えるひと/恋月 ぴの
 
立ち止まるのもありとは思うものの
夏らしさを感じる風の勢いに身を任せてみる

買い物帰りとかに立ち寄る近くの公園
このあたりは放射線とは多少なりとも無縁でいられるのか
小さな子供たちのにぎやかな歓声

それでも木陰のベンチは寝転がれないようになっていて
ある種の仕組みのなかで生かされていることを知る

それだからどうこうって訳ではなくて
眩い青空に面と向かい合い
誰にも告白できないようなことを呟きたいだけ

風に吹かれる
夏の風に吹かれて

ささやかな自由は幾多の自己犠牲を要するとしても
別段抗うことなく
それでいて訳知り顔になることもなく

風に吹かれる
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