ボクシングの夜/草野大悟
 
闘うまえの 夜は こわい
こころも からだも
ブルブルふるえて
ねむれない

ねむれないまま
夜があける

朝日をながめる
トイレにいく
レタスとチーズをたべる
ガムをかむ
流しに唾をはく
バンテージを準備する
リングシューズを揃える

時間だ

リングが待っている

勝つことだけを信じて
それだけをしんじて
おれは
そこに
あがっていた


リングの
いちばん前の席に、いつも
両手をあわせた
あなたが いた
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