キッチンでバックから/はだいろ
 

本棚を、好きな本だけで、
埋めてしまえば、
ぼくとゆう人間が、それで、
できあがるといい。
ところが、
彼女の家には、本どころか、
雑誌すら、一冊もない。
安っぽい家具、
ピンクのマット。
どうゆうひとなのか、
さっぱり、わからない。

いっしょに、
ぼくの好きな劇団の、お芝居に連れてゆく。
(イキウメ「散歩する侵略者」
三軒茶屋シアタートラムにて上演中。)
ぼくはもう、
胸をうたれて、つぶれそうに泣き出しそうだったけれど、
彼女には、たいした感想もなく、
聞き出しようもない。
きっと、退屈ではないくらいのことで、
意味も考えるちからがないのだ。

[次のページ]
戻る   Point(4)