詩なのか/nonya
 
りはじめる瞬間は
恐怖のあまり
カビの生えた常套句にしがみついている

下りおえてしまえば
安堵しすぎて
暗喩よりも甘いものが食べたくなる

やんちゃな感情の起伏を
転がり落ちる
その速度だけが僕に詩を書かせる



どこが詩なのか



生き方が
詩ではない
存在そのものが
詩であろうはずもない
凡人は

平坦で陳腐な日常から
今日も言葉の石を
掘り起こしては
それを丹念に磨く

その石が
詩の原石であることを
願いながら磨く

その石が
誰かの夜空で瞬くことを
祈りながら磨く

その石を並べただけで
挨拶にはなるし
店のメニューにはなるし
日記にはなるのだけど

それでも言葉使いの端くれは
言葉の石を
磨かずにはいられない

それはおそらく
磨くことが
磨こうとする意志が
詩のようなものであるからだろう




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