あるいは五十に届くかどうかの/はるな
ぱんぱんになった子ねずみを三十か四十集めて家中でレースをしたい
なだらかな丘にそよぐささやかな草原を剃り落としたい
甘やかなミルクを二週間あつめて煮詰めて飲み干したい
扉のおくにある柔らかな肉を切り出してシチューにしたい
(お湯が沸くおとがきこえる)
(おゆがわくおとがきこえる)
(おゆわがくおがとこえきる)
(おわゆくがとこおがきえる)
三十か四十の子ねずみに熱湯をまわしかけて縮み上がらせたい
三十か四十の
それは三十か四十かあるいは五十に届くかどうかの
わたしの中に入ってきたものたちを消毒して
それはなにも汚くなかったんだよということにしたい
肌を這った指の跡がいつまでたっても消えない
それは三十か四十の
最初のひとつがどれだかわからなくなるように重ねた
指の跡が目にみえるようだ
日に日に濃くなって
それがわたしの肌そのものになる
それは三十か四十の子ねずみで
お湯が沸いたからもう大丈夫だ
朝を迎えるたびに家中をレースさせる
三十か四十の子ねずみ
あるいは五十に届くかどうかの
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