泡とステンドグラス/一尾
優しい振りして
きっとあなたは本当は誰のことも好きじゃないんでしょうね と
彼女がそろそろ爪を引いて残していった傷口に
特別に興味はないけれど
夜半に覚える例えば窒息してしまいそうなほどの痛みや絶望を
一体だれが共有してくれるというのだろう
甘えや弱さなど見せたくないのだ他人に
どうか慰めないで欲しい
寂しさなど固有のものだ
ひけらかすものじゃない
人としてもしかしたら欠損しているのではないかという不安
不安 不安 不安不安
泡を吐くように打ち明けたら誰か抱きしめてくれるのか
嘔吐
きらきらしたものが見たい
それでもし目が潰れてしまってもいい
五彩のステンドグラスの先にある美しい世界を感じたい
体の底にある粘着質な水の溜まる暗い沼を
抱えながらそれでも
それでも見たい
誰のことも好きじゃなくても
戻る 編 削 Point(2)