この世に/シャドウ ウィックフェロー
 


君が生まれて病院に駆けつけたとき
ベッドに座っていた君の母さんの姿を忘れない

全体に色のない部屋の中で白いネグリジェを着た彼女は
少し放心しているように見えた
表情はとても柔らかく
ぼうっとした淡い光が
その顔や体全体を包んでいた
それは何かをやり遂げたひとが全ての力を出し尽くして
心地よい疲労の余韻に浸っているような
少し大げさに言えば神々しいみたいな
オーラに満ちていた

そのあとに初めて見た君は小さくしわくちゃで
ほんと風にあてるのも憚られるひ弱な赤ちゃんだった
そのとき君への愛情がわいたかと問われれば
正直なところそんなには
わかなかった気がする
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