薫風/シホ.N
 


薄闇に沈む畳から身を起こし
ゆっくりと窓際に寄って立つと
部屋のなかのうちそこだけは
意外なほど明るい

こういう窓際というのは
明暗を分ける境界のようであり
しかも今の自分は暗の側に居り
明のほうを物憂げく眺めているということが
いかにも象徴的なようにも思えて
自嘲とも言いきれない不思議な微笑が
意図に支配されないまま
顔面に湧いて
貼りついているようである

そして自分が
日頃いつも
何だか間の悪いような違和を感じて
居場所を転々として探しているうちに
水が低いところへ流れるとでもいうふうに
窓際に座を落ちつけてしまう
という事実が
意識する
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