仮眠/たもつ
 
 
 
リンカーン・ヘアのきみが
動物園に忘れ物をして
糸電話で通信している
ノルウェーの森
パジャマに縫いつけられた
イカの一夜干しを
かじりながら
 
地元の英雄に
さい銭を投げつける子どもたち
買ってきたナメクジの専門書に
付箋を付けるのに飽きて
きみはただクッキーの空箱を
壊し続けた
 
プライバシーをはぎ落された犬が
エッフェル塔を背負って
岬を走る
影踏み遊びできみに回ってくるのは
いつも桜の木の役目ばかり
ミジンコが顕微鏡で
自分の手相を覗き込んでいる
涼しい午後
 
きみは夜遅くまで仕事をする
残業をする
夕食はとらない、集中力が切れるから
一人、また一人と帰宅していく
最終列車が発車する合図が鳴り響く
もちろん、きみのところには届かない
自席で仮眠をとる
おやすみ
ぼくらは疲れている
 
 
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