『リスカ/チカ』/川村 透
 
--僕は彼女の写真を、白く明るいハダカを忘れない
 パールの明度とオレンジの彩度
 君はマーメイド/マーマレード
 あるいは風船でいっぱいの海/渋谷/チカ

 リスカ。
 チ カ


満月の夜
僕はストリートをさまよう一人の船幽霊だった。
月の光は死にかけた街路灯より蒼くて
藍色の路地裏で僕たちはすれ違うように出会い
ケータイを陰にかざしながら、いつもと同じ
蛍のような取引をかわした。

扉を閉めてあらわれたセーラー服は蛇のような緑色だった
彼女は脱皮するように緑色を脱いだ
蛍光灯は月よりも無慈悲にハダカを輝かせる、その
白い腕には幾重にも、おごそかな赤い軌跡
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