キャビネ/はるな
 
あるのかが、とつぜんわからなくなってしまう。

幼いころ、昨日と今日とはまったくの別もので、目が覚めれば自然と新しい一日が横たわっていた。それがだんだんと境目が薄れ、いまでは昨日と今日は地続きだ。時間を分ける境目は国境のように頼りなく、でも頑としてある。それをいまだに受け入れられないのだ。古びた野菜と、自分の身体との区別が付かなくなってきた。卵の黄身が白身ではないのは一体どういうわけだろう。壁に振り積もる埃でさえ、実在しているのに。
物事が異様に境目づく朝、境界はいっそ意味をもたなくなる。


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