キャビネ/はるな
 

ピーナツバターを塗りたくってから、くだいたナッツをまんべんなくのせて、すこし焦げるまでトーストする。卵を溶いて、砂糖と出汁で味をつけて充分熱したフライパンで巻く。沸騰して火を止めてから三十秒経ったお湯で二杯分のコーヒーを淹れる。お湯をわかしている間にはすべてのカーテンを開けて、窓も少し開ける。あたらしい空気が入ってきて、こちら側の空気と、あちら側の空気を混ぜかえす。

奇妙な夢をみて、夢から抜け出せずに、ぼうっとしていた。キャビネにはうすく埃が積もっている。朝の光だと、それがよくわかる。米びつの上で葉物がしなびている。赤くなる前の太陽が床を斜めに這っている。それらがどういう理由でここにある
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