影絵/岡部淳太郎
僕たちは
太陽をかついだ
高く とてつもなく
高いところまで
持ち上げて
その中に入りこんでは笑った
僕たちは
それがいまなのだと信じた
ひたすらに信じながら
じぶんじしんの
中心に向かって
燃えていった
ひたむきに燃えながら
いっぽうでみずからのざんがいの
黒い灰がつくりだされているのに
気づかないふりをした
そうしていれば
笑いつづけることができた
じぶんじしんが
まわったあとの
うらがわの心を
持たなくてもすんだ
空にほうられた球は
いつかは落ちてきて
鋭いものに打たれる
そんなあたりまえのことも
僕たちの
幼さのまえでは理解されなかった
そしていつか見られるはずの
たがいの知らない顔を忘れた
太陽が照らす地上で
枝を広げる樹木の下には
そっといやされながら
もうひとつの
僕たちが
うたっていた
うたうふりをしていた
その枝の葉のすきまに
打たれた球は
落ちてくるはずだった
(二〇一一年五月)
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