つたない断章/シホ.N
 


僕はおさなかったので
ミッキーマウスが
消防夫だったりした
脳膜がメンマになって
少しおかしかったりした
火星人に思いを馳せると
くしゃみが出そうだった

トタン屋根が何かを
食べていたようだったし
サーカスのブランコは
ゆあーんゆよーんとなって
校庭のブランコにも僕は
雨の日にしかのれず
ゆあゆよんと揺れた

得体の知れぬ
繋船ホテルを遠く眺め
夜明けのような死のにおいを嗅ぐ頃
狂った犬が夜のシーツをはぐのを
とても親しい事件とみた

陽があるのに暗い空に
鳥が屋根をついばみ
音も言葉もない世界の
はだかの岩道を
ウイスキーの瓶が転がり落ちて

言葉のない世界を
硬質な言葉で現わした人もいた

僕は
例えば世界について
語ることもできず
真似事さえつたない


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