かなしみ/木屋 亞万
かなしみを抱えている
それは乳房
もとはひとつの
おおきなやわらかい
かたまりだった
それが
たえがたい苦しみと
痛みをともないながら
二つに引き裂かれて
胸の前にはりついている
つかずはなれず
ゆれている
かなしみを敷いている
それは尻
もとはただの穴だった
口から始まる管の終り
尻が何かを踏み敷くたびに
尻自身も身体にふみつけられてきた
そのやわらかなふくらみには
白いかなしみが詰まっている
つめたい石にすわるたびに
皮ふからじんわり
かなしみの波
かなしみを蓄えている
それは肺
はりさけそうな白い骨に
つかまれて膨らむ
二つの器官
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)