かなしみ/木屋 亞万
 
かなしみを抱えている
それは乳房
もとはひとつの
おおきなやわらかい
かたまりだった
それが
たえがたい苦しみと
痛みをともないながら
二つに引き裂かれて
胸の前にはりついている
つかずはなれず
ゆれている

かなしみを敷いている
それは尻
もとはただの穴だった
口から始まる管の終り
尻が何かを踏み敷くたびに
尻自身も身体にふみつけられてきた
そのやわらかなふくらみには
白いかなしみが詰まっている
つめたい石にすわるたびに
皮ふからじんわり
かなしみの波

かなしみを蓄えている
それは肺
はりさけそうな白い骨に
つかまれて膨らむ
二つの器官
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