灰色の壁/番田 
 

語るべき理想は何であったとしても
人に何も語ろうとはしない
いつであったとしてもそれは確かなのだろう
私自身であったとしても
誰であったとしても
それは きっと その場所にあるがままなのだ


私は何もそこで言うことなどない
風の中で風景を見つめる
その風を理解できたらいい
風の吹くどこかで
風の何を思うこともないが
それは風の中であったような思いがした


そして 今日も 何もなくなった 街で
ぼんやりと誰一人としていないその場所で
私は ひとり 過去の壁にもたれたまま
時の彼方に見えた 知らない路地の中に消えていく


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