薄暮(序)/within
 
青い顔をした老人は
路地裏を杖をついて歩いていた。
どこからか漏れてきた白い蒸気が
路地全体を雨上がりの草叢のように
湿らせている。
 
白と茶のまだら猫が
前を駆け抜けていった。
人の気配はない。
この辺りにも、以前はひと気があったのに
随分さびれてしまった。
曇り空を見上げると、
のしかかってきた鈍色の運命の重さに
背骨を潰されそうになった。

部屋に戻ると暗くなった部屋が
自動灯で白く照らし出された。
今の蛍光灯はあまりにも明るすぎた。
もっと温かみのある電熱灯のような
やさしい暖色のものに変えてもらおうか。
この白に照らされると余計に疲れる。
安ら
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