ケ・セラ・セラ/高梁サトル
長く暗い道を歩くときは
壁に標を残しておいで
忘れたら帰り方さえ分からなくなる
とっくに淋しさなんて通り越した
薄ら寒いだけの街の骨董屋で
ひび割れた器を探している
清潔すぎて
長い時間共にいられなくなった
人びとは
見て見ぬフリをする遊びを覚えて
いつだって犠牲がなければ輝けない
野蛮なものは過ぎた愛情だと笑った
穢れもいつか浄化され
ゆるやかな海に還れると
縋りつく憐れな頭を撫でる
手が目の前で突然無機物になって
、カリリ
噛んでも味も
無い
「おとうさま。」
苦行なんて愚かな行為を
自ら進んでするものじゃないと
それは向うか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)