ケ・セラ・セラ/高梁サトル
 

長く暗い道を歩くときは
壁に標を残しておいで
忘れたら帰り方さえ分からなくなる
とっくに淋しさなんて通り越した
薄ら寒いだけの街の骨董屋で
ひび割れた器を探している

清潔すぎて
長い時間共にいられなくなった
人びとは
見て見ぬフリをする遊びを覚えて
いつだって犠牲がなければ輝けない
野蛮なものは過ぎた愛情だと笑った

穢れもいつか浄化され
ゆるやかな海に還れると
縋りつく憐れな頭を撫でる
手が目の前で突然無機物になって

、カリリ

噛んでも味も
無い
「おとうさま。」

苦行なんて愚かな行為を
自ら進んでするものじゃないと
それは向うか
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