今夜の足跡/朧月
 
文字に手をかけて
広げてゆこうとするけれど
かたくてとても広がらないから
あきらめそう

旅にでたくて
背伸びしていた

わたしの中に
あるはずのない世界に
わたしはいない

文字によりかかり
なにか言おうとするけど
あなたには まるでからっぽの
ポケットみたいに 頼りないよね

浅くても確かな
指の温もりがあなたへ伝える
きもちは 
消えはしない息吹と
愛しさのかたち

文字は 文字以上の働きはしないかもしれない
だけど今宵も綴り続ける
まるで使命のよに

わたしの生きた証などと
いいたくない
たださらりと 呼吸するよに
ぺたりと跡残す


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