今夜の足跡/朧月
文字に手をかけて
広げてゆこうとするけれど
かたくてとても広がらないから
あきらめそう
旅にでたくて
背伸びしていた
わたしの中に
あるはずのない世界に
わたしはいない
文字によりかかり
なにか言おうとするけど
あなたには まるでからっぽの
ポケットみたいに 頼りないよね
浅くても確かな
指の温もりがあなたへ伝える
きもちは
消えはしない息吹と
愛しさのかたち
文字は 文字以上の働きはしないかもしれない
だけど今宵も綴り続ける
まるで使命のよに
わたしの生きた証などと
いいたくない
たださらりと 呼吸するよに
ぺたりと跡残す
戻る 編 削 Point(3)