囀り/渡 ひろこ
 
声高に叫べないから
文字の裏にスルリと隠す
ほとばしる感情をメタファーにゆだねて
苦く噛みしめる思いをほどいて昇華していく


そうやって幾つ言葉を散らしてきたのだろうか


押し黙っていると苦しくて
出口のないラビリンスの中を
喉元を押さえて
廻り続けてしまう


いつの間にか遠く置き去りにしてしまった年月は
もう懺悔の手を差し出すことを赦さないから
自らを救済するために綴った一枚一枚が
ぎこちなく歩いてきた後に
はらり、はらりと落ちていく
躓きながら、そこかしこに
未完の私はそのままで


重ねるひとひら
息を呑み込み
震える多面体の私を平
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