湿度計/杠いうれ
未明に。
未明に原発が白に包まれた。
霧なのか水蒸気なのか分からないけれど、幻想的で危うい光景だった。
夜はいつも湿度が高い。
太陽が奪わないぶん、ひたひたしている。
昼と同じに水分を放っていても、夜には飽和状態になって、目に見えるようになる。
霧だったのか、水蒸気だったのか。
夜はいつも湿度が高い。
雨の日の唄に悲しげなものが多いのも、きっと同じ仕組みだろう。
体もその中身も素材は変わらない筈なのに、夜はやはり、ひたひたするものだから。
ひたひたする。
ひたひたする体を抱えて、悲しいことを思う。
悲しいをぞんざいに扱う為に、体をぞんざいに的確に扱われる
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