祈りの鐘/コーリャ
 

感傷を海鳥に笑われる

ついでにイロスもちょっと奪われる


/AM11:00

「幸せってなんなんすかね?俺にはちょっと手の余る言葉ですよ」
友達が顔をうつむかせた
コーヒーカップにそのままめりこんでいくのかとおもった

彼はこのまえ天使に会った
比喩とか幻視とかでなく
まじで天使だったらしくて
これもらったんすよと
彼の差し出した手のひらには
傷だらけのビー玉がひとつ転がっていた
スカイブルーだった

「なにこれ?」

「心臓」
と彼は美しく笑った


/AM9:00

だれか結婚するのか
聖堂から鐘の音がきこえる

すごく晴れてた
でも

神様の手違いみたいに
葡萄畑だけに雨が降っていて

天気雨を
日本では
狐のウェディングというのさ
と女におしえる

女は
笑いもせず
真面目に僕のために祈ったので

俺は正気だというと

あなたは今泣いているといわれた

頬をぬぐうと
あたたかな液体が指にこびりついた

だれかの為に鐘が
高らかに鳴っていた


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