家探し/宿無し/茶殻
 

犬の被り物したままのあの人が、
ガラスの向こうでしょぼくれる姿が、
タクシーを待つ間、ずっと見えた
いつも、こう、なんだろうなぁと見ていたら
頭上の犬が赤黒く乾いた舌を出した

タクシーが滑り込んできて、
タイヤに弾かれた石が、
転がってきたんだけど、
石は怒る様子もなくて、
ぼくの墓にしようと思って拾った、のに、
タクシーを降りてから、車の中に、
それを忘れたことに気付いて、
落ち込んでたら、
家のそばのコンビニのまえで、
ぼくの頭にコーギーが降ってきて、
父ちゃんがそれを庇ってくれて、
コーギーのことを責めたりもしなかったから、
ハロー、と呼びかけて、
去っていく、
コーギーの墓を、
見つけるために、
折衷案、
ティラノザウルスの化石、に、
ぼくは住めないだろう、
けど、
コーギーなら、
いいんじゃないか、
空から降ってきた、宿無し、な、わけだし。


ああ、それでもまだ、
下界は
あたらしい家族ばかりだよ。

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