プロローグ/きりえしふみ
 
よ、と
放たれた 1ミリにも達しないほんの些細な反目
そして可能性「だった」こと……

きみの流した涙じゃ誰ひとり 救えないかも知れない

ぼくの投じた歳月は目盛りをゼロから1に変える……それだけのことかも知れない

(……だけど それが無意味なことだとでも 思うのかい?)

すべての歴史はそうやって変わってきた 動いてきた
進んでみては 覆されてきた
たった一太刀の抵抗から たった一粒の涙や
誰かが誰かを思う ほんのひと房の気持ちから

ぼくも きみも もっと
もっと 躍起になっていい
もっと 悲痛に求めてみてもいい
もっと 喚いて……もがいて どうにかしようと
がむしゃらになって 砕けんばかりに生きてみたっていい

(そうしないと ぼくらの明日は来ないのだから)

ぼくの投じた一声が きみの元に届くまで百年以上かかるのかも知れない

きみの差し出した手が 誰かに握り返されるまで千年かかるのかも知れない

(始まりはいつも……そんな微々たる1からだった)

(c)shifumi kirye 2011/05/09

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