紅葉狩りーライフル発砲少年ー/天野茂典
 
いちめんの紅葉であった。空は透けて見えた。峪川の水はここちよく流れていた。桜とも劣らないみごとな見栄えだった。誰がおもいついたともいえない。あまりにも紅葉が妖艶だったからであろう。大勢のハイカーに銃弾をむけるものがいた。みるみる河原は血でそまっていった。パニック状態だった。
猟銃を乱射したのは十代の若者だった。
傷ついたもの、息絶えたもの、さまざまだった。少年はにんまりしていた。硝煙の匂いがあたりに立ち込めた。生きてるものも怯えて、へたり込んでいた。紅葉の名所とはいえ、ここはかなり人里から離れていた。弁当は食いかけだった。少年は、一喝した。生きているものすべてここに集まれ。男の頭は鉈でたたき切
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