ぞうけい (ご利用は計画的に)/乾 加津也
陶芸家の身(うつわ)はどうだい
いく筋も、寄せてはかえす指のとおりをつくってやった、朽ちるろくろのうえで、あたたかな心拍はいちどだけ濡れる、断層つづきの、ぬめる泥の顔で、柄でもないおかえり、兵馬俑の褥から、いつかの月に孕ませられた毛穴の分泌が、かたく、はびこる岩苔をなめし、峡谷の霧にまぎれた木犀を一瞬だけまなざす。いち、に、さん、の肉声(あいず)をしぼる所存で、ござい、ますを希釈して、まいり、(虹鱒をにぎりしめ、)虹は手繰ろう。らせてみせよう。みずからかすみ、ぼやき、手当ての襞を弛ませ、やせた、菜種ひと粒に看取られてとっぷりと、窯へ、さあ
(未完成の)手をくべて
まっすぐな
足裏でくしゅくしゅとつなぎあわせた
ひとつながりの
海図を
星あかり
頭蓋を練り
蝶をおもう
古来の
鼻という字に附着する、こんな
蛋白質(せいぶん)は、どんな具合だい
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