不感症/しゅう
旅先で、手持ちぶさたに腕輪をつくる
仲間に冷やかされないよう
妹のためと偽りながら
あなたのために腕輪をつくる
ほそい安物の革ひもに
木製のビーズを通していく
欠片の穴を覗きながら
できるならこの穴があなたの部屋に通じていたらと思う
ふいに
渓谷沿いの安旅館に、地鳴りが響いて
盆に盛った欠片が
ぽろろと畳を横切っていく
そのとき私の後頭部の方角遠く
町が崩れて
川がつぶれて
人が倒れていた
けれど私の目にはあなたにつながる欠片しかなかった
そのとき私の右耳の方角、帰るべき場所で
母が私の身を案じた
父が、受話器に手をかけた
友がテレビをの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)