公園の風/たもつ
公園の風に
子どもたちが落書きをしている
落書きは異国の文字みたいに
すぐに形を崩し
消えてしまう
ぼくはすぐ近くで
地図にも載っていないような小さな紙を
呟きよりもさらに小さく
破り捨てている
宝くじが当たったんだよ
父はそう言い残して
車椅子のまま
母とぼくと犬を置いて
家を出ていった
母は新種の虹を探しに
ぼくと犬を置いて
家を出ていった
犬はぼくを置いて
家を出ていった
落書きに飽きた子どもたちが
滑り台の階段を上っていく
どこまでも上っていく
危ないから早く滑っておいで
そんな言葉が喉まで出かかったのに
喉がどこにあるのか
むかしから見つからない
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